情報漏えい・サイバー攻撃のニュースが続く今、中小製造業がまず確認したい 3つのこと

最近の攻撃で変わった面は確かにある。それでも、入口の多くは昔からの場所。工場を止めないために、業者に聞く 3つのこと

情報漏えい・サイバー攻撃のニュースが続く今、中小製造業がまず確認したい 3つのこと

2026年10月時点の情報です。最終更新: 2026-11-04

「うちも危ないのでは」と感じていませんか?

この夏から秋にかけて、「不正アクセスにより、情報が漏えいしたおそれがあります」というお知らせを、何度も目にしたのではないでしょうか。10月に入ると、IPA(情報処理推進機構)や JPCERT/CC といった公的な機関も、続けて注意喚起を出しました(IPA・JPCERT/CC)。

「AI で攻撃が変わった」という話も耳にします。何から手をつければいいのか、迷っている方も多いと思います。

先に結論です。

  • 最近の攻撃で、変わった面は確かにあります。預けた先から一度に広がる被害の形と、AI による攻撃の 費用と速さ です
  • それでも、仕事を止める攻撃の入口の多くは、以前からある VPN やリモートデスクトップなどの「外からつなぐ仕組み」のままです
  • そこから入られて、工場や業務が 止まる ことが、中小製造業にとっていちばん大きな被害です
  • 止めないために確かめたいのは、外からの接続・認証・バックアップ の 3つです。社長が自分で設定できなくても、いつもの業者にこの 3点を聞けば始められます

たとえば、こんな場面を想像してみてください。

月曜日の朝、出社したら、生産管理のシステムが開かない。今日の加工の指示も、出荷の予定も確かめられない。工作機械は動いていても、これでは仕事になりません。

中小製造業にとって本当に怖いのは、情報が漏れることだけではありません。こうして、ふだんの仕事そのものが止まってしまうことです。

最近のニュースには、2つの話が混ざっています。一つは、使っているサービスから情報が漏れる話。もう一つは、自社のシステムに入られ、仕事そのものが止まる話です。どちらも無視できませんが、この記事では、中小製造業にとって深刻な「止まる」ほうを中心に考えます。

最近のサイバー攻撃、何が変わった?

確かに、変わった面はあります。主に次の 2つです。

預けた先から、一度に広がる

2026年には、ネットショップを作るためのサービスの運営会社が不正アクセスを受け、そのサービスを使っていた多くの店舗に影響が及びました(運営会社の発表)。

10月には、ホームページを作るための Web 制作サービスへの不正アクセスも公表されました。こちらでは、保存されていたデータに加えて、利用者がそのサービスに預けていた、ほかのサービスに入るための「認証情報」も流出した可能性があります(※1)。

※1 認証情報は、プログラムがほかのサービスに入るためのパスワードのようなものです。スマホのアプリで「〇〇サービスが、××サービスのあなたのアカウントへのアクセスを求めています。許可しますか」という画面で OK をすると、××サービスに入るための認証情報が、〇〇サービスに保存されます。

自社のパソコンには何も起きていないのに、預けた先から情報が出ていく。しかも今回は、預けた認証情報を、利用者が自分で無効にする必要がありました。 1か所が破られると、そこにデータや認証情報を預けていた多くの会社へ、一度に被害が広がるおそれがあります。

製造業の会社でも、受発注・会計・メールといったネットのサービスや、設備の遠隔保守など、外とつながる仕組みは身近にあります。何かあったときの手順は、後の「不正アクセスが起きたときにすること」にまとめました。

AI で、攻撃の下調べが安く、速くなった

AI を使うと、攻撃先の下調べなどが、安く、速くできるようになります。 英国の NCSC(国家サイバーセキュリティセンター)は、2027年までの見通しで、既存の手口が AI で進化する可能性を「非常に高い」としています。一方で、完全に自動の一貫した攻撃が出てくる可能性は「低い」との見方です。

AI そのものが情報の漏れ口になる話と、社内で AI を使うときの決まりは、AI を便利に、安全に使うための記事にまとめました。

こうして並べると、攻撃がまったく別物になったように感じるかもしれません。でも、仕事を止める攻撃がどこから入ってくるかに目を向けると、少し違う景色が見えてきます。

では、入口も新しくなった?

実は、そうではありません。

仕事を止める攻撃の代表が、ランサムウェア(データを暗号化して業務を止め、「身代金」を求めるウイルス)です。その侵入の経路で多いのは、VPN(事務所の外から社内のネットワークにつなぐ仕組み)とリモートデスクトップ(離れた場所から社内のパソコンを操作する仕組み)です。警察庁のアンケートでは、この 2つが 2021年から毎年、7割を超えています。

AI のニュースがこれだけ続いていても、入口の多くは、何年も前から同じ場所なのです。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

VPN とリモートデスクトップの割合は、警察庁がランサムウェアの被害に遭った組織に取ったアンケートより(2021年から毎年 7割超)

しかも、入口になった機器の半分以上で、当てていない修正(パッチ)が残っていました。新しい手口を心配する前に、古い入口の戸締まりが残っている、ということです。

逆にいえば、修正が最新でも入られた例も少なくありません。修正だけでなく、パスワードだけに頼らない認証も要ります。手口の多くは以前からのものなので、こうした基本の対策が今も効きます。

工場にもある、業者とつなぐ入口

何年も前に、設備のメーカーが遠隔保守のために置いていった通信機器。設備は問題なく動いているので、誰も気にしていない。そんな機器が、工場のどこかにありませんか。

取引先や業者とつなぐ入口から入られた例は、実際にあります。2022年には自動車部品メーカーの子会社が、外部の企業との専用の通信に使う機器(リモート接続の機器)から入られています。同じ年には、外部の給食センターに置かれた保守用の VPN から、病院が入られました。

業者が置いた機器や、業者が管理する機器のこともあるので、自社の一覧から漏れていないかを確かめておきたい場所です。

そこから入られると、工場はどうなる?

冒頭の月曜日の朝を、もう少し先まで考えてみます。

ランサムウェアで工場が止まると、まず困るのは生産と出荷です。でも、問題はそれだけではありません。システムを戻すために社員が対応に追われ、予定していた仕事も進まない。納期が遅れれば、取引先にも迷惑がかかります。

しかも、こうした被害は、数日で片づくとは限りません。先ほどの病院では、基幹システムの復旧に 43日、全体の復旧には 73日かかりました。(調査委員会の報告書 概要版、経済産業省『工場セキュリティの重要性と始め方』)病院と工場では事情が違います。それでも、自社の仕事が何週間も止まったら……と考えると、なかなか怖い話です。

お金もかかります。警察庁が、ランサムウェアの被害に遭った組織に取ったアンケートでは、復旧の費用が 1,000万円以上だった組織が 4〜6割ほどです。

影響は社内にとどまりません。先ほどの自動車部品メーカーの例では、部品の供給が止まったと報じられています。

何千万人分という個人情報の漏えいや、被害額がはっきり出る詐欺は、数字が大きく、目に入りやすい被害です。 でも、人件費、売上、取引先の信用、そして何週間という時間。金額にしにくいだけで、小さいわけではありません。中小製造業にとっては、詐欺や個人情報の漏えいより、はるかに大きな被害です。

取引先から、対策を求められる流れもあります。経済産業省は、企業のセキュリティ対策の段階を★の数で示す制度を、2026年度末ごろに始めることを目指しています。

バックアップも対策ソフトもある。それでも危ない?

「うちはバックアップを取っているし、対策ソフトも入れている」。そう思われた方もいるかもしれません。

バックアップがあった被害組織の 7〜8割が、戻せていない

警察庁のアンケートでは、バックアップを取っていた被害組織のうち、7〜8割がバックアップから戻せませんでした。戻せなかった理由の多くは、「バックアップも暗号化・消去された」でした。

これでは、「バックアップを取っていますか」と聞くだけでは、あまり安心できませんよね。入り込んだ攻撃者が管理者の権限を手に入れると、同じ権限でバックアップまで消せてしまう構成が多いためと考えられます。

私なら、バックアップがあるかどうかより、「最後にいつ戻せたか」を確かめたいところです。大事なのは「消されずに残っているか」「実際に戻せるか」の 2点です。

対策ソフトがあった被害組織の 7〜9割で、何も検出されていない

同じ警察庁のアンケートでは、対策ソフトを入れていた被害組織の 7〜9割で、対策ソフトが何も検出しませんでした。対策ソフトは入れたうえで、入口を減らすことと、入られても戻せる備えを組み合わせます。

では、社長は何を確かめればいい?

ここまでの話を、打つ手に直します。社長が自分で設定する必要はありません。まずは、いつもの業者に次の 3つを聞いてみてください。

  1. 外から社内につながる経路を、すべて把握していますか
  2. その経路と管理者のアカウントに、2段階認証は入っていますか
  3. 攻撃を受けても消されずに残り、実際に戻せるバックアップはありますか

設備はそのメーカーや保守の業者、パソコンやネットワークは IT の業者、ホームページは制作の業者、と聞く先が分かれていることもあります。「分からない」という答えが返ってきたところが、最初に手をつける場所です。

返ってきた答えは、次のように受け止めると判断しやすくなります。

  • 経路: 「一覧があり、誰が管理しているかも分かる」ならひとまず安心。「たぶん VPN だけです」は要注意
  • 2段階認証: 「外からの接続にも、管理者のアカウントにも入っている」ならひとまず安心。「一部だけ」「分からない」は要注意
  • バックアップ: 「ふだんの管理者のアカウントでは消せない場所にあり、定期的に戻す練習もしている」ならひとまず安心。「毎日取っているが、戻したことはない」は要注意

それぞれの問いの中身と、業者と進めることを、以下にまとめます。

1. 外からつながる経路

侵入の経路の 7割超は、VPN とリモートデスクトップです。どこに入口があるのかが分からなければ、守りようがありません。

  • 業者と進めること
    • VPN、リモートデスクトップ、設備の業者の保守の経路、使っているネットのサービス(ホームページ、会計・受発注・メール、ファイルの共有など)とその連携を、一覧にします
    • 何の入口か、誰が管理しているか、最後に更新した日、サポートの期限も書いておきます
    • 使っていない入口は閉じます。つないでいる機器には修正(更新)を当て、サポートの切れた機器は入れ替えるか、ネットワークから切り離します
  • 続けて聞いてみること: 「その機器の更新は、最後にいつ当てましたか」「使っていない経路は、閉じてありますか」

2. 2段階認証と、弱いパスワード

修正が最新でも、入られることがあります。パスワードだけに頼らない守りが要ります。

2段階認証(多要素認証)は、パスワードに加えて、スマホなどでもう一度確かめる仕組みです。

  • 業者と進めること
    • 外からつなぐ仕組みと、管理者のアカウントから、2段階認証を有効にします
    • 初期のままのパスワードや推測しやすいパスワード、使っていないアカウントが残っていないかを確かめます
  • 続けて聞いてみること: 「初期のパスワードのままの機器や、辞めた人のアカウントは残っていませんか」

3. 消されずに戻せるバックアップ

バックアップを取っていた被害組織の 7〜8割が、戻せませんでした。理由の多くは、バックアップまで暗号化・消去されていたことです。

  • 業者と進めること
    • 管理者の権限(社内のパソコンやサーバーの設定をまとめて変えられる、特別なアカウントの権限)と、バックアップの権限を分けます。ふだん使う管理者の権限では、バックアップを消せないようにします
    • ネットから切り離したバックアップか、書き換えられないバックアップ(決めた期間は、消すことも上書きすることもできないもの)を持ちます。専門的には「イミュータブル(変更不可)なバックアップ」とも呼ばれます
    • 実際に戻す練習もしておきます
  • 続けて聞いてみること: 「管理者のアカウントが乗っ取られたら、バックアップも消されますか」「最後に戻す練習をしたのはいつですか」

不正アクセスが起きたときにすること

使っているサービスが「不正アクセスがあった」と発表したら

その日のうちに、次のことをします。詳しい手順は、AI の記事にまとめました。

  1. 発表が本物かを、届いたメールのリンクではなく、そのサービスの公式サイトで確かめます
  2. そのサービスのパスワードを変えます。同じパスワードをほかのサービスでも使っていたら、そちらも変えます
  3. それだけでは足りません。そのサービスと連携していた先(たとえば会社のメールや表計算)の管理画面で、連携の許可を外し、認証情報を作り直します
  4. 連携していた先で、最近 3か月に怪しい使われ方がないか、記録を見ます

自社が被害に遭ったら

困ったときに相談できる、公的な無料の窓口があります。IPA は 10月に、中小企業を含む企業・組織を対象にした「不正アクセス特別相談窓口」を開きました。

個人情報が漏れたときには、報告の義務が生じることがあります。不正アクセスによる漏えいなら、1人分でも報告の対象です。速報は 3〜5日が目安で、確報は 30日(不正の目的によるものは 60日)です。決まりは今後変わる点もあるので、個人情報保護委員会の案内で確かめてください。

さらに余力があれば

  • 持つデータを減らす: 保存期間を決めて消し、大事なデータは置き場所を分けます
  • 送金の手続きを決める: 社長になりすまして送金させる詐欺(ニセ社長詐欺)の被害も出ています(警察庁のまとめ)。支払い先の変更は届いた連絡とは別の方法で確かめ、送金は 2人で承認すると決めておきます
  • 設備・保守の業者との契約に、つなぎ方を書いておく: 常時はつながない、名前付きの ID(業者の担当者ごとに分けた ID)を使う、弱点が見つかったら連絡する、などです
  • 見守りと駆けつけを頼めるサービスを検討する: IPA は、監視・駆けつけ・簡易な保険を一体にした「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を進めています。いまは、新しい形のサービスを無償で試せる取り組み(実証)もあります。募集の時期は、提供する事業者ごとに違います(IPA のページ)

今日できる最初の一歩

今日、いつもの IT の業者と、設備の保守の業者に、3つの質問を送ってみてください。そのまま使える文面を置いておきます。

いつもお世話になっております。当社のセキュリティについて、3点確認させてください。

  1. 外から社内につながる経路を、すべて把握していますか
  2. その経路と管理者のアカウントに、2段階認証は入っていますか
  3. 攻撃を受けても消されずに残り、実際に戻せるバックアップはありますか

「分からない」という答えが返ってきたら、そこが最初に手をつける場所です。しっかり対策されていると分かれば、それも安心につながります 👍

この記事は、新しい統計が出たら更新します。


「業者からの答えを、どう受け止めればいいか分からない」という方は、ぜひお問い合わせください。中小製造業専門のDXパートナーとして、一緒に考えます。

👉 お問い合わせはこちら

この記事をシェア

まずは、あなたのお悩みをお聞かせください。

漠然としたお悩みでも構いません。課題整理の壁打ち相手として、お気軽にご相談ください。